*SAKULIFE*

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「ファーストラヴ」


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「ファーストラヴ」

島本理生さんの「ファーストラヴ」を読了しました。

北川景子さんが主演ということで観に行こうと思っているのですが、映画のプロモーションを通して物語の筋が見えてしまうのを避けたくて、先に原作を読んでしまうことにしました。

アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が、画家の父親を刺殺。
「動機はそちらで見つけてください」

公認心理師の主人公・真壁由紀は、環菜と面会を重ね、環菜の過去と心を整理しながら、何が起きたのかを明らかにしようとします。
そして、その過程の中で、由紀自身の過去にも向き合っていく…というストーリーです。

物語が進むにつれ、登場人物それぞれの、繊細な過去が明らかになっていきます。

わたしはこのような繊細な経験をしないままここまで生きてきたので、共感や共鳴の感情は湧いてこず、終始、厚いアクリル板を通して物語を見ているような感覚でした。

蜜蜂と遠雷」の映画を観たときのことです。
映画版は時間の都合もあり、登場人物の心情描写が削られていました。
そのため、観る側の想像力で、登場人物の心情や想いを補完していかなければなりませんでした。

わたしの凡庸な想像力だと、ステレオタイプの心情しか想像することができません。
登場人物の心情は、物語中で語られないと、分からない。
想像で補完して、心情を分かった気にはなりたくない。
そう思ってしまったのです。

そこで、映画を観てから原作を読みました。
原作では、映画では削らざるを得なかったであろう心情もきちんと描かれていて、やはり、わたしのステレオタイプの想像と、実際の心情には隔たりがあることに気づけました。

「ファーストラヴ」は、原作の段階で、心情描写が不完全だな、と感じてしまいました。

それは、繊細な経験がある人は無意識的に、その想いのすべてを語ろうとしないのか、わたしの読解力がないのか、同じような経験をしたことがある人が読めば、強烈な共感を伴って感情が湧き出すものなのか。
わたしには分からないのですが……。

“明らかになっていく由紀の過去の秘密”について、興味を引く宣伝がなされていたので、少し拍子抜けしてしまいました。

特に両親との関係性については、もう少し由紀の気持ちを教えて欲しかったです。
釈然としない部分が残りました。

でも、重複しますが、同じような経験をした人が読めば、共鳴するものなのかな。
この作品には、アクリル板越しにこの物語を見つめたわたしには、決して分かることができない世界があるのかもしれません。

映画がどのように映像化されているのか、期待したいと思います。