2021.8.29(Sun)
風景画のはじまり コローから印象派へ
at SOMPO美術館
行ってきました。
*********************************************
9月12日までの開催。
試験が近づいてきているのもあり、行くか悩んでいたのですが、新宿に行きたい用もあったので行ってきました。
今日も日時指定予約。
すごく空いていました。
SOMPO美術館は、何年も前に一度だけ訪れたことがあります。
その時はもっと階が上のワンフロアの美術館だった気がするな~と思っていたら、昨年7月に階下に移転・リニューアルオープンしたのだそう。
以前観に行ったのは、ターナー展でした。
ターナーも風景画で有名な画家。
今回のテーマもまた風景画であることに、風景画とSOMPO美術館への勝手な縁を感じます。
*********************************************
わたしはターナーが好きで、風景画といえばターナーだと思っているのですが、この展示にはターナーの作品は登場しません。
(解説には登場します)
ですが、これまであまり腰を据えて見たことがなかったコローやブーダンの作品が多く展示されており、勉強になりました。
ここからは、展示を観ながら書き留めた感想をまとめていきます。
カミーユ・コロー
『樹間の小道、春』(1860ー70)
コローは、目の前の風景をそのまま描き出すだけではなく、解釈された自然を再構成して描き出すことにも力を入れていたそうです。
この作品に描かれた村人は、実際にいた人ではなく、
自然の中にいる半ば形式化された村人という存在といえる。
彼が持つ優れた理解力によって解釈された自然が、十全なかたちで再構成された作品である。
なんだそうです。
風景を緻密に計算し、場面として再構成する。
自然と人口の調和を目指したんですね。
コローの作品は、2作品撮影可でした。
『イタリアのダンス』(1865-70年)
『湖畔の木々の下のふたりの姉妹』(1865-70年)
コローの作品は、光と影のコントラストが色濃い作品が多かったです。
木々の暗さと空の明るさのコントラストがとても美しいのですが、スマホのカメラはこういった明暗の双方を写し出すことがとても苦手。
あまりきれいに撮れませんでした…。(写真そのものが壊滅的に下手…)
繊細な空と雲が美しかったです。
コローが光と影、そして影の向こうの光といった描写に力を入れているのはほかの作品からも見て取れました。
たとえば『川を渡る』(1860-67年)では、暗い木の影の間から射す夕陽が差し色、というか差し光になっていました。
また、『水辺で洗濯する女性たち』(1860-70年)では、木の隙間から射す光の効果が印象的です。
『アルバーノ湖の思い出』(1865-70年)では、空の明るさと木の影のコントラストが美しいのですが、影の木の部分に朱色の実?がなっていて、差し色の効果を出している気がします。
空の夕陽の色と、木の実の朱が引き立てあって、全体にまとまりを与えている気がしました。
美しかったです。
風景画を見ていると、当時もこんなに美しい景色が広がっていたのだと思うと、絵を通してタイムスリップした気分になります。
コローの描く人物は、どれも小さくて綿密な描き込みではないのに表情や感情まで感じられるのがすごいです。
テオドール・ルソー
『沼』は、濃くぱきっとした色彩が印象的です。ひきこまれます。
ドービニー
点描画の先駆けかと思うほど、緻密な展で葉を表現した『森の中の小川』と、写実的な風景画である「風景、雨模様の空」のギャップが激しくて驚きました。
『森の中の小川』は、近くで見ると粒々ですが、引きでみると粒が溶け合ってとても美しい。
ほんとうに点描画のようです。
ドービニーはサロンの審査員としてモネやピサロの人選に尽力したそうですが、印象派を評価するのもなんだか納得の美しさでした。(モネもピサロも点描画ではないけれど)
アンリ=ジョセフ・アルビニー
彼は“田園風景と樹のミケランジェロ”と呼ばれたそうです。
作品の前で息を吸って目を瞑ったら、画家の見た景色が見えそうなくらい、写実的で美しかったです。
版画
版画の展示も充実していました。
ガラス版印刷やエッチングの解説があったのもありがたかったです。
エッチングといえばエッシャーですが、今までよくわかっていませんでした!
エッチングの黒の表現を見ていると、漫画のカケアミを思い出します。
レルミットの『村にて』という子どもがお母さんに怒られてる風景を描いた版画が展示されていたのですが、1850年代にもこんな風景があったのだと思うと可笑しくなりました。
空の色を見ていても、今、見上げる空と同じ色をした作品もたくさんあるな、と思うんです。
空の色も、人の営みも、その芯にあるものは今も昔も不変なのかもしれないなぁ、なんて思いました。
ブーダン
コローから「空の王者」と賞賛されたそうです。
空、美しかったです。
印象主義の展開
締めくくりは印象派。
急に場が色彩で華やぎはじめます。
フェリックス・ジエム
『コンスタンティノープル(イスタンブール)』(1890年以前)
薄雲のかかる青空とエメラルドグリーンの海、美しい…………!
コンスタンティノープルを描いた作品ってめずらしい気がします。
あまりにも美しく、ポストカードを買ってしまいました。
実物はもっと、淡い空と濃い海が美しかったんです…!
スタニスラス・レピーヌ
やわらかく、鮮やかで美しい………。
印象派の作品は、景色に彩度と光のエッセンスをたらりと垂らしたかのように鮮やかで、とても美しいです。
やはり、わたしはこの時代の作品が好きです。
ピエール=オーギュスト・ルノワール
『風景』
このルノワール作品、色彩ややわらかなタッチは完全にルノワールだけど、空はかすれているしなんだかお絵かき感あるなぁ、と思って見ていたら、習作だそうで納得。
お絵かきルノワールと勝手に名付けました。(おこられるよ)
習作でも、色彩とタッチでルノワールとはっきり分かるのがすごいですよね。
ルノワールはもう1作品展示されていて、そちらは完成作品だったのに、ポストカードはなぜか習作のこちらが採用されていました。ポストカード選んだえらい方も、習作だからこそのすごさ、を買ったのかなあなんて思いました。
クロード・モネ
大好きなモネは2作品。
『税官吏の小屋、荒れた海』(1882年)
荒れた海でも、波打つ海が輝いていてとても美しいです。
小屋の暖色と、海の寒色のコントラストがとってもきれい。
海の色は、言うならばこれぞシャーベットトーン。
冷たい色のおしゃれ、です。
(昨日の記事をご参照ください)
『ペリールの岩礁』(1886年)
シャーベットトーンの上の作品とは打って変わって、こちらは濃い海。
よく見ると岩礁や野の花に様々な色が使われており、カラフルです。
日の当たる岩礁と、影になる岩礁との陰影と色の濃淡のコントラストも美しい。
シャーベットトーンの『税官吏の小屋、荒れた海』と比較しても、全体に色が濃厚。
二つ並んでいると濃淡のコントラストがとても美しかったです。
モネ、好きです……。
シャーベットトーンの海のポストカードが欲しかったところですが、なかったです…。
『ペリールの岩礁』なら額絵もあったので、せっかく部屋にピクチャーレールがあることですし買ってきました。
岩礁、あまりハッピーなモチーフではないですけどね!
東京来て初めて触れたモネ記念です。
ゴッホのひまわり
そしてSOMPO美術館といえば、ゴッホのひまわりです。
地上の入口にも陶板画が。
陶板画って、絵の具の盛り上がりも表現できるのか!と驚きました。
大塚国際美術館に行きたくなりました。
そして、本物も撮影可でした。
大きかったです。
ナショナルギャラリーのひまわりを元に描いたそうですが、ナショナルギャラリーのひまわりってこんなに大きかったかしら。(先日観たばかりよ)
花の筆致が盛り上がっていて立体的です。
時々、ゴッホは、絵を平面作品ではなく、立体作品として捉えていたのではないかと思うことがあります。
盛り上がった絵の具から生まれる影に至るまで、作品の一部として計算されていたのではないかと思ったりします。
*********************************************
こんな形で大満足の展示でした。
東京は美術館がたくさんあって素敵ですね。
ほかにも実は行きたいところがあるので、開拓していきたいです。