『キネマの神様』
今日は朝から『キネマの神様』を観てきました。
公開されてから日が経っているためか、朝の上映1回しかなく早起き。
予約した時に見ていた座席数が少なめだったので、てっきり小さな箱なのかと思いきや、高さのある座席と大きなスクリーンでびっくり。
素敵な環境で観ることができました。
初めて観に行った映画館でしたが一気にお気に入りになりました。
これから映画を観るときはいつもここに来たいなぁ。
映画館の環境のよさもあいまってか、これまで生きてきて観た映画の中でいちばん、
「映画館で観てよかった」
と思った作品になりました。
『キネマの神様』、素晴らしい映画でした。
松竹映画100周年を記念した山田洋次監督作品。
ギャンブルの借金で家族に見放された主人公が、映画を通じて再生していく姿を、若い頃と現在を交えながら描いていく作品です。
主人公・ゴウの現在の姿は、本来であれば志村けんさんが演じる予定で、志村けんさんにとって、これが初主演映画の予定だったのだそうです。
昨年ご逝去されてしまったため、代役として沢田研二さんが演じられています。
沢田研二さんのゴウ、たいへん素晴らしかったです。
しかし、志村けんさんならどんな風に演じられただろうか、と思わずにはいられませんでした。
志村けんさんが新型コロナウイルスで亡くなったためか、新型コロナウイルスによる映画館の苦境を描き出すべきだとされたのか、現代のシーンでは、新型コロナウイルスの影響も描かれているのが印象的でした。
映画館、緊急事態宣言で大変でしたよね………。
映画界への想いが伝わってきます。
若い頃のゴウ役は菅田将暉。
撮影所近くの食堂の娘を永野芽郁さん、映写室で働くゴウの友人をRADWIMPSの野田洋次郎さん、銀幕女優を北川景子さんが演じます。
この映画はいろんなことを教えてくれます。
映画の魅力、夢を叶えることや、過去の縁が現代も繋がり続けることの尊さ、才能を認めてくれる人の存在の強さ。
現代と過去が交錯することで、丁寧に張られた伏線の回収も見事です。
映画…“銀幕”を題材にした作品ということもあり、画面作りにたいへんこだわりを感じました。
何気なく映っている要素やささやかな台詞に、細やかな伏線が張り巡らされていてたいへん見応えがありました。
テレビの画面で観ていたら、この細やかなしかけに気づけていたかわかりません。
映画館の大スクリーンに観ることができてよかったな、と心から思いました。
この作品を映画館で観られてとてもうれしいです。
ポップアップショップでの出会い
北川景子さんがご出演されていることは存じていましたが、観に行く気はもともとありませんでした。
ところが先日出かけた時にたまたまポップアップショップを見つけて、観に行きたくなって観に行ったんです。
北川景子さん
北川景子さんが美しすぎます。
あまりの美しさに、北川景子さん演じる桂園子の初登場シーンで泣いてしまいました。
美しい。
運転する大女優・桂園子。
この作品、北川景子さんはご出産される前と後、双方で撮影をされたのだそうです。
観ている分にはいつがそうなのか全く分かりません。
女優さんのお仕事は、瞬間瞬間の姿が作品としてフィルムに残るので尊いな、と感じます。
永野芽郁ちゃん
永野芽郁ちゃんもかわいかったです。
衣装展示
衣装展示もされていまして。
北川景子さんの衣装はちらっとしか登場しませんが、印象的でとても美しいワンピースでした。
観た後に改めて写真を見返すと感慨深いです。
脚本
映画を観た後だとこれだけで泣けてきてしまいそうな小道具の脚本。
ポップアップショップ、今も開催されているのかな?と思い調べてみたら、9月1日まででした…残念…。
ぜひ、映画館で観てほしい!と思った作品でした。
とてもおすすめです。
ネタバレあり
ここからはネタバレを含みます!
ご覧になっていない方は、できればここから先は読まずに映画館で映画をご覧いただきたいです!
目次でネタバレするといけないので、今日はここに目次を置いておきます。
野田洋次郎さん
なんとしても特筆したいのが、野田洋次郎さんです。
野田洋次郎さんは映写室で働くゴウの友人・タケシンの若かりし日を演じられています。
みなさま素晴らしいのですが、わたしの中で最優秀男優賞を決めるとすれば野田洋次郎さんです。
繊細な演技に心惹かれました。
本業はみなさまご存知の通り、RADWIMPSのフロントマンでいらっしゃる洋次郎さんですが、演技がとっっっってもお上手でびっっっっくりしました。
きっと、アーティストとしての繊細さが、細やかな演技につながっているのだと思います。
心と動きがつながっている。
思えばあまりに素晴らしい演技で意識できていませんでしたが、沢田研二さんもアーティスト。
音楽と演技には、共通する想いの震わせ方があるのかもしれません。
手紙
タケシンさんは永野芽郁ちゃん演じる淑子ちゃんのことが好きで、ゴウに勧められて淑子ちゃんに手紙を書きます。
ですが、淑子ちゃんはゴウのことが好きなので、お断りの手紙を書きます。そしてゴウにその手紙を託すのです。
タケシンさんが淑子ちゃんからのお手紙をゴウから受け取るシーンは大変心が痛むシーンなのですが、怒りに震えながらも淑子ちゃんからもらった大切な手紙は無碍にできずきちんと畳む姿に泣けます。
淑子ちゃんのその後
淑子ちゃんはその後、ゴウと結婚するために岡山に行くのですが、数十年の時を経て、再びゴウと淑子ちゃんと再会したタケシンさんは、
「金を貸してくれ」(だったか、酒を出してくれ、だったか)
と頼むゴウに、
「淑子ちゃんからの頼みは断れない」
と断ります。
現代のこのシーンを観た後に過去の回想があり、タケシンさんが当時から淑子ちゃんが好きだったことが明かされるんです。
タケシンさん。泣けるて。
もうその後は現代の映画館にタケシンさん(小林稔侍さん)と淑子ちゃん(宮本信子さん)が並んで座っている姿だけで泣けます。
タケシンさんの深い愛が泣けます。
昔の縁が今もつながっているってとても美しいです。
夢を語る
若かりし日のタケシンさんは、淑子ちゃんに夢を語ります。
「東京の郊外に映画館を建てたい」
「名前だけはもう決まっている。“テアトル銀幕”」と。
現代のシーンは、その多くのシーンがタケシンさんが経営する映画館“テアトル銀幕”を舞台に繰り広げられます。
タケシンさん、しっかり夢を叶えたんですね。
対照的な2人
ギャンブル好き、映画監督の夢をあきらめ田舎へと帰ったゴウと、映画館を建てる夢を叶えたタケシンさんの姿は対照的です。
ゴウがタケシンさんに淑子ちゃんに宛てた手紙を書くように進めたのも、
「淑子ちゃんはタケシンと結ばれた方がいい」
との想いから。
タケシンさんの心を想うとあまりにひどいですが、ゴウの気持ちはわからないでもありません。
実際に現代の淑子ちゃんはゴウが抱えた借金に追われて大変です。
娘の歩(寺島しのぶさん)は言います。
「どうして別れなかったの?!」
すると淑子ちゃんは、
「あの人が借金抱えてひとり寂しそうにしてるのを想像すると、かわいそうだから」
と答えます。
これは物語の前半なので、わたしたちは娘の台詞にうなずくのですが、過去を知っていくと、淑子ちゃんの想いが分かってきます。
淑子ちゃんは、ゴウと結婚するために岡山へと向かう車中、車を出してくれた園子(北川景子さん)にこう言われます。
「しても後悔するし、しなくても後悔するのよ」
淑子ちゃんは、後悔するとわかっていても、ゴウと結婚する人生を選んだのです。
わたしにはできない選択です。
結婚について、人生について、いろいろなことを考える日々の中で、淑子ちゃんの決断は鮮烈にわたしの心に残りました。
才能を認めてくれる人の大切さ
そして、ゴウの孫・勇太くんもよかったです。
前田旺志郎さん。まえだまえだの弟さんらしい。
祖父であるゴウの映画の才能を知り、ギャンブル漬け、借金まみれのゴウの人生を扉を開く存在です。
過去のゴウにも、才能を認めてくれる人が身近にいれば、『キネマの神様』はクランクアップを迎えられたのかもしれない。
孫の勇太くんに才能を認められたことで、素直に脚本の書き直しに励むゴウの姿が印象的でした。
あの時叶えられなかったクランクアップを、脚本の完成という形で現代で叶えられてよかったです。
ラストシーンは、『すばらしき世界』を思い出しました。
とても美しい映画でした。
気になること
気になることがひとつだけ。
北川景子さん演じる桂園子さんのその後です。
過去の回想シーンで銀幕女優として圧倒的な存在感を放つ桂園子さんですが、その後どうされたのか一切不明なまま映画は終わります。
モデルとなったであろう銀幕女優さんが、引退されてご隠居されてその一生を終えられたようなので、それが反映されているのでしょうか。
銀幕女優として輝く姿のままで終わる桂園子の姿は儚く、そして神々しくもありました。
美しかったです。
北川景子さんの美の説得力がなければ成り立たない役でした。
素晴らしかったです。
素晴らしい映画でした。
ぜひ、映画館で観ていただきたい映画です。