ゴッホ展―響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
2021.11.27(Sat)
ゴッホ展―響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
at 東京都美術館
行ってきました!
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ゴッホ展、行ってきました!
日時指定制で、前々から予約していたのですごく楽しみにしていたんです。
展示数も多くとても濃厚な展示で大満足でした…!
グッズのお買い物含めて2時間半滞在していて驚き。笑
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オランダのクレラー・ミュラー美術館の作品と、ゴッホ美術館の作品を中心に構成されている今回の作品。
序盤はクレラー・ミュラー美術館所蔵の写実主義からキュビズムまでの作品、その後はゴッホの画家としての人生を歩きながら、変わりゆく、進化していく表現の軌跡を見ることができました。
ゴッホの生涯を網羅できる大規模な展示は、以前京都市美術館で開催されていた時にも行きましたが、その時はゴッホの自画像が多かった記憶があります。
今回はその時よりも知識も深まっているので、よりしっかりと観られた気がします。
ヘレーネ=クレラー・ミュラーは、家業の潤沢な資金を元手に、ゴッホの作品を個人として一番収集した個人収集家だそうです。
ヘレーネが購入した作品の価格が壁に掲示されていたのですが、ゴッホだけでざっと数億!驚きです。
ヘレーネは19歳で父のビジネスパートナーの弟と結婚、4人の子宝に恵まれるも悶々とした日々を過ごす中、41歳で収集を始めたんだそうです。
わたしたちもまだまだ何かを始められるのかもしれない…と思いました。笑
わたしたちが見られるのは、収集を始め、美術館を建てるまでの華やかに見える結果論。
悶々とした日々を過ごしていたかもしれない20代、30代への想いに寄り添うのはなかなか難しいです。
ゴッホが生前は大成しなかったというのも、何度聞いても今ひとつピンと来ません。
だってゴッホというだけで美術館は大混雑なんですもん。
でも、もし、生前に名声を得ていたのなら、あんな人生の終わり方ではなかったのかもしれません。
ゴッホがここまで後世に名を馳せるようになったのは、ヘレーネや、ゴッホの弟の妻・ヨーの努力があってこそ。
才能を確信し、尽力した方々のパワーもすごいな、と思います。
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ヘレーネの愛した芸術家たち
ゴッホ以外の作品も、素敵な作品が多かったです。
ミレーやルノワール、スーラやシニャックなど、有名な画家の作品もたくさん展示されていました。
『2月、日の出、バザンクール』(1893年)
カミーユ=ピサロ
とってもお気に入り。
鮮やかで淡い色彩がとってもかわいい。
モネの色彩を感じていたら、説明にもそう書いてあった!笑
『グリッドのあるコンポジション5:菱形、色彩のコンポジション』(1919年)
ピート・モンドリアン
原色イメージの強いコンポジション、こんなくすみカラーの作品があるだなんて!
ほんものはもっと絶妙なくすみ具合で美しかったです。
今はくすみカラーがトレンドだから、昔の作品に今の流行を見いだしたりすると、トレンドの先取りなのかと思うときってあるよね。
しかもダイヤ型!おしゃれ!
『キャベツのある置物』(1921年)
ジェームズ・アンソール
異彩を放っていたのが『キャベツのある置物』。
これ、全体的な色彩は令和で言うならゆめかわなのに、後ろの顔と置物が不穏すぎます。笑
とても印象的で、ポストカードにも採用されていて笑いました。
ジェームズ・アンソールはあまり存じていませんでしたが、今回覚えました。笑
ほかにも、
- ルドン『キュクロプス』
…一つ目の巨人が恋をしたニンフの恋人を殺してしまうという神話を元にした作品)
- ヨハン・トルン・プリッケル『花嫁』
…十字架のキリストと花嫁の結婚を描いているけれど抽象的で不思議な雰囲気
…ギターやトランペットが複雑に絡まり合って1つの作品を成している
などなど、枠にとらわれない作品も多く、記憶に残る作品が多かったです。
これだけでひとつ企画展できそうなボリュームと満足度でした。
フィンセント・ファン・ゴッホ
『たゆたえども沈まず』を読んでからというもの、(フィクションとはいえ)“テオ”という文字列を見ると、
「大変やったねえ。。」
とねぎらいの言葉をかけたくなります。
ゴッホが画家を志したのは27歳。
亡くなったのは39歳。
たった12年でこれだけの作品を残しているのだからすごいです。
死後これだけ有名になり、その生涯が細やかに明らかになっているのは、手紙がたくさん残っているからなのでしょうね。
テオの妻・ヨーはテオとの書簡を書籍にして発表したんだそうです。
フィンセントは作品のライナーノーツといえる文章を手紙にたくさん残しているので、その言葉を読むことで、作品への理解も深まります。
素描
素描もたくさん展示されていました。
ゴッホの素描をこれだけ一気に見たのは初めてかもしれません。
写実的な風景画も、黒チョークだけで光の濃淡が描き出された人物画もとても上手でした。
オランダ時代
『じゃがいもを食べる人々』に代表されるオランダ時代の作品はどれもとても暗め。
ISO値もシャッタースピードも低すぎない?というような作品がたくさん。笑
でも、こういう暗い写真って、一眼だとISOとシャッタースピード落としたらすぐ撮れますが、絵で表現するのって大変だと思います。
上手。
パリ
パリにやってきたゴッホは、自分の作風が時代遅れであることに気づき、新たな画法を模索します。
その中で、印象派や新印象派に影響を受けた作品も描いたのだそう。
『レストランの内部』(1887年)
(正式な技法ではないそうですが)点描を使っているのがこの作品。
ゴッホにもこんな作品があるだなんて驚きですよね。
アルル
ゴッホの生涯を知っていると、このあたりから、不穏な空気が漂い始めて心がどんよりしてきますね…笑
ゴッホのアルル滞在は耳切りという衝撃的な事件で終わりを迎えますが、元々アルルにやってきた目的は、アルルの明るい太陽とコバルトブルーの空、そして花咲く自然を描くためだったそうです。
たしかにアルル時代の作品って、きいろのイメージ強い。笑
『ひまわり』もアルル時代の作品です。
『緑のブドウ園』(1888年)
これはきいろではないけど、ポストカードを買った作品。
なんと1日で描き上げたそう。
うねる青空に、晩年の作風のはしりを感じます。
空の青も、様々な色を使って描かれたブドウ園も、そこにいる人々の様子もとても素敵でした。
サン=レミとオーヴェール=シュ=オワーズ
ここからは療養に入っていくゴッホ。
周りで見ているみなさんから聞こえてくる会話が、
「もうすぐ死ぬ…」
みたいな悲壮感漂うものばかりで笑いました。笑
でも、有名な作品はこの時代に生まれたものも多いんですよね。
大好きな『星月夜』もサン=レミでの作品です。
『星降る夜』はアルルでの作品なんですね。
ゴッホはアルルでは花盛りの時期に思うような制作ができず、サン=レミに来てから咲き誇る花を見つけては喜び、描き続けていたんだそうです。
四季折々の自然の美しさに心を染められる繊細な人だったからこそ、その繊細さが苦しみに蝕まれていたのかもそれない…と感じてしまいます。
しかし、どれだけの苦しみがあろうとも、作品を生み出し続けていたであろうことは、残された作品の枚数が物語っています。
生前に名声を得ることはできなかったかもしれないけれど、ゴッホは絵を描くために生まれてきた人なんだな、と思います。
糸杉
そして、今回の展示の目玉となる糸杉。
(タイトルほんとは糸杉ではない 笑)
『夜のプロヴァンスの田舎道』(1890年)
美しかったです………。
『星月夜』とつながっているに違いない夜空。
近くから観ても遠くから観ても美しい。
満月と三日月が同時に上っている空想的な空だと思っていたのですが、もしかすると左は星なのかな。(星らしいです)
左下にいる人々は、なんとなく『星降る夜』の構図を思い出します。
とても大きく、そして美しく。
素敵な作品を日本で見られて幸せです。
アムステルダムに行ったとき、体調を崩してしまって、ゴッホ美術館は目の前のグッズショップまで行ったところで結局行けずじまいなので、いつかまた行きたいなぁ。
その時には足を伸ばしてクレラー・ミュラー美術館にも行ってみたいな。
そしてまた、オルセーの『星降る夜』にも、ニューヨークの『星月夜』にも再会したいです。
海外にまた、行けるようになるのはいつの日になるのかなぁ。