テレビでの放送はまだ終わっていないようですが、WOWOWのアプリでは既に全話配信されています。
第1話だけ放送で観ていて、京都出身としてすっきりしない部分も多かったのですが、アートをテーマとした原田マハさんの原作、それもモネの「睡蓮」が大きな鍵を握る作品ということで、続きも観てよかったです。
2話から最後まで、一気に観てしまいました………!
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ストーリー
舞台は京都。
モネやゴッホなど、世界的に有名な画家の作品のコレクションを誇る有吉美術館の副館長・篁菜穂(高畑充希)は、アートに対して卓越した審美眼の持ち主。
妊娠したことから母・克子(森口瑤子)の薦めでひとり東京を離れ、京都で過ごすことになります。
最初は
「わたしだけ異邦人みたい」
と言っていた菜穂ですが、ある日訪れた画廊で偶然、「青葉」という小さな作品に出合います。
その作品に強く心惹かれた菜穂は、その作品の作者・白根樹(しらねたつる・SUMIRE)との接触を試みますが、樹の師匠であり、その才能に嫉妬する志村照山(松重豊)がそれを拒みます。
一方東京では、菜穂の夫・篁一輝(風間俊介)が三代目を務めるたかむら画廊が、ある一件により危機に瀕していて…。
京都を舞台に、様々な思惑が交錯していきます。
京都
この作品の舞台は京都。
一見、「おこしやす」と観光客に開かれた古都であるように見えて、実は心の奥の目は笑っていないという京都人の姿が全面に押し出されています。
京都の画廊の主人・美濃山(松尾貴史)は言います。
「それが京都なんです」
そういうしたたかな文化のある場所なんだろうけど、ここまで出さなくてもいいんじゃ…?
原田マハさんは京都がお嫌い…?
と思ってしまいました。笑
ドラマWの映像美
今、15年ぶりくらいにWOWOWを契約していて、前に契約をやめるちょっと前くらいにWOWOWドラマWが始まって、子どもながら、
「月2,000円以上払わないと観られないのに、ドラマ作るの!」
と驚いていました。笑
なんてかわいげのない子どもなの。笑
しかし、ドラマWの映像創りはきっと映画に近いものがあるのではないでしょうか。
ひとつひとつのカットや演出に、並々ならぬこだわりを感じ、台詞のないシーンひとつとってもとても見応えがあります。
こだわりを映像からひしひしと感じて、
「これがWOWOWがドラマを創る意義なんだなぁ」
と感じます。
今回も、ひとつひとつのシーンがとても凝っていました。
絵画がたくさん登場します。
作品ひとつひとつの光の受け方によって変わる見え方を、レンズを通して表現することへのこだわりを感じました。
美しかったです。
劇中で時間が2年ほど経過するので、四季折々の京都の姿が見られ、そのひとつひとつが美しかったです。
アートが好きな方にはとてもおすすめです。
ここからは作品の結末に関わる部分も書いていきたいと思います。
違和感
最後まで観終わってから改めて思うのですが、この作品、そもそもの設定からして違和感があるんです。
それが、序盤のとっつきにくい原因だと思います。
まず、身重の菜穂をひとりで京都に置いておき、遠ざけようとする母。
京都に頼れる人がいるわけでも、劇中のご時世がコロナなわけでもありません。
(違和感がありすぎて原作のストーリーを調べたら、原作は福島の原発事故後で、そこから遠ざかるために京都に来たようです…)
そのうえ、娘の夫である一輝に言い寄る母。
一般的な母娘関係では考えられません。
この親子関係の歪みは一体?と思っていたのですが、その真相が明らかになったとき、感じていたすべての違和感に合点がいきました。
克子が菜穂の他に子どもを産まなかったのは、菜穂に対して一筋の母性があったのか、できなかったのか、子どもはいらなかったのか、分かりませんが。
「孫を…抱けないのね…」
という台詞は気の毒ではありましたが、これまでやってきたことを思えば全く同情できないのでありました。
というか夫もそうだけど身重の娘を京都に追いやり書家の先生にご厄介にと押し付け妊娠中のサポート何もしてないくせに
「孫を…抱けないのね…」
ってなんなんだろう。
令和のストーリーとして有り得ないよね。
東京の人たちは何かと
「菜穂と生まれてくる子どものためなんだ」
って言うけど、その妊娠中のサポート全部人任せですけど、って思いますよね。
東京の人たちの妊娠出産に対する意識が軒並み昭和なのに対して、姉妹と先生とお手伝いさんの4人で子どもを育てていく結末は、新たな家族の形で素敵だな、と思いました。令和。
京都と東京
この作品は、京都に軸足をおいていますが、東京も登場します。
京都と東京でのそれぞれの住居に、二都市の色がとても出ていて、対照的に描かれています。
菜穂の夫・一輝の東京の住まいはタワーマンションの高層階。
窓の外からは東京の摩天楼が一望できます。
一方、京都で菜穂が身を寄せる鷹野先生のお宅は、お宅にたどり着くまでに、広大な森の中に転々と石が敷かれていて大変歩きづらく、外部からの者を簡単には寄せ付けない京都らしさがあります。
菜穂の母・克子はこの場所を通るシーンが2回出てくるのですが、ピンヒール履いてるものだからとても歩きづらそうで。
最初に歩いているシーンなんて、森口瑤子さんがちょっとコケッとなっているのがそのまま使われています(これすらもう演技なのかもしれない)
しかし、2回目に克子がその場所を歩くシーンでは、ピンヒールで石の上を歩きづらそうに歩く姿が、“東京のスタイルでは京都にふさわしくない”ことを暗示しているように思えたんです。考えすぎかもしれませんが。
衣服に関しても、菜穂が京都になじんでいくにつれて、和服を着る機会も増えていき、いつもスーツなどのかっちりとした装いの東京組との違いがここにも現れています。
京都と東京のコントラストも、この作品の裏テーマとしてあるのではないか?と思いました。
縁
菜穂が中盤でよく使う言葉に、「縁」があります。
京都への縁。
この作品は、「縁」や“血のつながり”がテーマになっている気がします。
血のつながらない家族が家族になる難しさ。
血のつながりを理由に物事を押し進めようとする愚かさ。
そして何より、血のつながりのある家族が引き寄せ合う力の強さ。
最初は
「異邦人のよう」
と言っていた菜穂でしたが、京都に深く接するうち、京都への縁が幼い頃からしっかりと根付いていることがわかり、とてもよかったです。
「自分の感性を信じてつらぬく場所」
「一生、信じる道にこの身を捧げます」
という台詞は凛としていて素敵でした。
京都でも、しっかりと生きていけるんだと思います。
瞳の色
印象的だったのが、樹役のSUMIREさんの瞳の色!
きれいでした。
縁だけ濃くて内側はグリーン?イエロー?
とっても美しい瞳の色!吸い込まれそうです。
樹役にぴったりのミステリアスな美しさで素敵でした。
モネ「睡蓮」
物語の鍵となるモネの「睡蓮」。
モネが売られてしまったときは、身を削がれるような想いでした…。
モネじゃなければ、こんなにも感情移入しなかったかもしれません。笑
それくらい、わたしにとってもモネは特別です。
ストーリーの構成上の理由だと思いますが、モネの「睡蓮」が菜穂名義になっていなかったのは不思議です。
真っ先にしそうな作品なのにな。
売られてしまった「睡蓮」、その先も大切にされたらいいんですが…。
「睡蓮」が売られてしまったと打ち明けた菜穂への鷹野先生の台詞はよかったですね。
原田マハさん
今年は原田マハさんの作品に触れる機会が多いです。
『キネマの神様』もマハさん。
わたし自身も美術館に行くのが好きなので、こういったアートがテーマとなっている原田マハさんの作品はとても楽しいです。
紫陽花
物語のラストは紫陽花の季節、初夏です。
春は過ぎています。
「来春に個展を」
と言っていた東京での志村照山の個展はどうなったんでしょうか。亡くなってしまったので立ち消えになってしまったのでしょうか。
京都で開催予定だったはずの樹の個展も。
東京での個展は京都での菜穂の暮らしには関係がないし、京都の樹の個展は終えられた、ということなんでしょうか。
どちらにせよ、穏やかに終わっていたのでよかったのかな、と思うことにします。
東京の方はどうなってても知らん。笑
おもしろかったなぁ。
WOWOW契約されている方はぜひ!
アプリを使えばスマートフォンでも、FireTVstickなどがおうちにある方はテレビでも観られます。