*SAKULIFE*

音楽と桜とミルクティーが好きな社会人が、日々の想い出やお気に入りをしまっておく宝箱。

『ドライブ・マイ・カー』

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『ドライブ・マイ・カー』観てきました!

村上春樹の短編を原作に、オリジナルの要素を含めて映画化された今作。
アカデミー賞4部門ノミネート、おめでとうございます!

今回1本無料で観られる権利があり、せっかくなので話題作を観てきました。

しかし、わたしは大変申し訳ないのですが、村上春樹作品が苦手………。
1Q84』だけ読破したのですけど、一部の描写に対する生理的嫌悪感が拭えず、それ以外の作品は読もうと思えないままここまで来ています。(お好きな方、申し訳ないです……)
そのため原作も未読。

今作が村上春樹原作と聞き、さらに上映時間が3時間と知り、観るかどうか悩んだのですが……いい機会なので劇場で観ることに決めました。

結果、開始3分で
「あああ~!!!原作読んでないけどこの辺りはすごく村上春樹っぽい気がする!!!違ったらごめん!!!あああ~!!!こういうところ!!!すごく!!!苦手!!!」

と思ってしまい先が思いやられましたが(申し訳なさすぎるのですが、村上春樹作品の苦手な理由をピンポイントで突いてくる台詞がありまして…)、そこからは引き込まれ、3時間あっという間でした。

おそらく幾重にもレトリックが重ねられた作品で、わたしはこの作品に込められた仕掛けや想いのすべてを受け止められてはいないのですが、とても素敵な作品でした。
静かに、登場人物の心が動いていきます。

その心の動きはとても繊細で、華々しく王道な作品に与えられるイメージの強いアカデミー賞にノミネートされたことを、不思議に感じる作品でした。

序盤に、
「沈黙がきこえる」
という台詞があり、「沈黙がきこえる」とは不思議な台詞だなと思っていたら、途中、雪景色の中で、音が完全に消えて、無音になるシーンがあるんです。

映画館で、スクリーンから何も音が聞こえなくなる瞬間って、なかなかないんです。

劇場にいた誰もが、物音ひとつ立てない、呼吸をすることすら憚られる張り詰めた空間。

スクリーンでなく、客席含めた空間を、きっと観客全員が意識した瞬間。

これが、「沈黙がきこえる」か。
と、初めて意識しました。

このシーンだけで、この作品を劇場で観た価値があったかもしれません。

無音のシーンは映画の中のほんの一部ですが、その他のシーンも、あっと驚くどんでん返しがあるわけでも、お金のかかった演出や豪華なセットがあるわけでもありません。

ハリウッド超大作とは対極にある、物語のほとんどが広島で完結する作品です。

日本語台詞の棒読みが大きな意味を持つ作品なのですが、きっと外国の方は字幕で見るだろうから、外国語の棒読みってあまり棒読みに感じたりしないのかな?と思ったりしました。

外国から見えるこの作品、を意識しながら観ましたが、評価の理由は自分だけではよくわからず。
なぜ、世界で評価されているのかが気になり、観終わっていくつか記事を読んでみましたが、あまりしっくり来るものがありませんでした。
アカデミー賞も変わってきているのかなぁ。不思議です。

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アカデミー賞のイメージとは離れている、と書きましたが、映画としてはとても繊細で、こころの機微に触れる素敵な作品だったと思います。

以下はネタバレを含みながらの雑多な感想です。

🚙映画やドラマをあまり観ないので、西島秀俊すらシロさんのイメージしかないわたし。序盤から
「シロさん、結婚してる……!」
となんだかあわあわ。なんだか西島秀俊さんにすみません。

🚙みさき役の三浦透子さん、全く存じておらず、ずっと田畑智子さんそっくりだなぁと思いながら観てました。
静かだけど声は凛としてて好きです。

🚙ごみ処理場を見て「雪みたい」というみさきの感性がなんだかおもしろいです。
雪国の人にとって雪は、ただ白いだけのものではないのかもしれない。クライマックスの彼女の故郷の雪景色を思い返し、今この台詞の意味を改めて探ります。
ごみは燃やされる運命で雪とは対極にある気がしますが、雪と火の対比に意味はあるのでしょうか。

🚙序盤、照明のスタッフさんの名前が目立つな、と思っていたのですが、ライティングがすごいのか、俳優さんの演技がすごいのか、そのどちらもなのか分かりませんが、瞳の輝きがすごかったです。
西島秀俊の序盤と岡田将生の車のシーンの瞳が。
西島秀俊は、輝きのない瞳に反射する光に絶望を感じずにはいられなかったし、岡田将生のきっと目に涙がいっぱい溜まっているであろう光り輝く瞳もすごかったです。でも瞬きしても涙が落ちない不思議。岡田将生の涙コントロールはどうなっているのか。

🚙岡田将生あんなにも顔が整っていて、さらに演技力も凄まじすぎてもうすごすぎる。
ストーリーの進行上しかたのない部分もありましたが、途中退場が残念です。
きっと干されたスキャンダルのきっかけもスマホの盗撮だったんでしょうね。だからきっとスマホカメラの音にあんなにも敏感なんでしょう。
しかしああなってしまってはもう復活できない。残念です。

🚙北京語の女優さんと、ユナ役の女優さんとてもよかったです。
手話で泣く日が来るとは。
手話、包み込むような感情が伝わる言語で素敵ですね。

🚙「正しく傷つく」という台詞がありますが、傷に正しさを求めなくてはいいのではないかと、傷つくことに正しさも間違いもないのではないかと思いました。
家福さんは、きっとありのままを素直に音さんに言えたらよかったのね。ありのままで言えることはきっと正しさとイコールではないような。気がする。
物語の核を否定している気がしますが笑
正しくでもありのままでも言葉のあやな気がするけれど、とにかく傷つくって難しい。というか傷を人に見せるのって難しい。
この作品は、家福さんとみさきが互いの傷を見せられるようになるまでの過程の物語なのかもしれないな。

アカデミー賞、受賞できたらいいなぁ……!

話題は変わりますが、アカデミー賞のノミネート作品を調べるうちに、助演女優賞に『ウエスト・サイド・ストーリー』のアニータ役・アリアナ・デボーズがノミネートされていると知りました。
ぜひとも受賞してほしいです!!!

図らずも、アカデミー賞ノミネート作品を2作品観るという文化的な休暇になりました✨