*SAKULIFE*

音楽と桜とミルクティーが好きな社会人が、日々の想い出やお気に入りをしまっておく宝箱。

『違国日記』


f:id:cherryoulife:20240601010425j:image

『違国日記』

ありがたいことに特別試写会が当たり、観てまいりました。
原作を全巻読んでいて公開を楽しみにしていたのでうれしい。ありがとうございます!

最初槙生ちゃんがガッキーと聞いたときは、ビジュアルのイメージは正直全然違うなと思っていたの だけれど、映像で観るガッキーは完全に槙生ちゃんだった。

というか正直ビジュアル「だけ」で言うと、笠町くんも奈々ちゃんもえみりも実里も弁護士も
原作とは全く違っているのだけれど、それぞれの登場人物の纏う空気は完全に原作のそれだった。

原作はなんというか、やわらかくて繊細なんだけど、でもここにしかない独特な空気を纏っていて、その空気感が何よりも大切な作品だと思っている。

空気感の映像化。
それはただビジュアルや視覚的な世界観を再現することよりも難しいことのように思える。

映画『違国日記』は、それを完璧に成功させていた。

そして、朝。

彼女だけは、漫画から飛び出してきたかのように、ビジュアルからして完璧に朝だった。

『違国日記』は、なんというかステレオタイプな感情の出てこない作品である。
中学の卒業式を間近に控えたある日、事故で両親を失った朝は、母の妹、叔母で小説家の槙生に引き取られる。

両親の葬儀後、心ない親戚たちの言葉に我慢ならず、槙生は勢いで朝を引き取ることになる。
漫画を読んでいたときは、そのときの槙生の台詞は、心ない言葉を遠慮なく浴びせる親族たちに向けた牽制なんだと思っていたのだけれど、そのシーン以降は親族の表情は一切映らず、純粋に「槙生と朝の対話」として描かれているのがとても興味深かった。
この演出は監督の意志を感じてすごくいいなと思った。

突然両親を失ってかわいそうとか、かわいそうだけど気丈に振る舞うとか、大人が考えがちなありきたりな感情はこの作品には出てこない。
一筋縄ではいかない心の機微のやりとりが会話と、言葉で紡がれてゆく。

朝は、子ども。
槙生ちゃんのほうが年が近いわたしからするとたまにぎょっとするくらい、子ども。
ただ、素直。
自分も思春期の頃も、こんなにも世界の勝手が分かっていなかったのだろうかと思ってしまうけど、自分の通り過ぎてきた中高生の感覚とはまたちょっと違う。

槙生ちゃんと奈々が友だちなのを見て、朝が
「大人の友だち?!」って言ったのにはすごいびっくりした。
そうだよ大人の友だちだよと隣の席の友だちを思いながら頭の中で答えた。
(友人が一緒に来てくれたので、隣に大人の友だちがいた。笑)
でもたしかに、中高生の頃に出会う大人って、「お母さん」とか「先生」とか役割のある人ばかりで、その大人たちが友だちやってるのはたしかに不思議なものなのかもしれない。

朝は未熟でたまにびっくりするけど、そこを隠さない素直さがいいところだなと思う。

そんな朝の親友えみり。
えみりはある秘密を抱えていて、そのためか朝よりは大人。
でも槙生ちゃんに
「なんで結婚してないんですか?」
とストレートに聞いててやっぱり彼女もまた年相応の高校生なのかもしれないと思い直した。

(でもまあ…………………ずっと独身なのはたしかに「ヤバい」から言ってることは間違ってないけど。笑)

えみり、最初のシーンはそうでもないんだけど高校生になってとてつもなく美人であることに気づいた。

朝の同級生の中では優等生の子も好きだったけど、ギターの子が良かった。三森ちゃん。
あれ歌ってるの本人なのかな。
朝ちゃんもよかったんだけどコーラスの三森ちゃんはとんでもない美声を隠し持っていた。
曲はチャットモンチー橋本絵莉子さんが書いていた。めちゃめちゃチャットモンチーだった。
青春との親和性が高すぎる。

朝の母、実里もやっぱりビジュアルイメージは原作とはちょっとちがう。
でもわたしがこの作品でいちばん好きなのは、“朝”の名前の由来。

朝。必ず来る新しくて美しいもの。

実里ののこしたノートに書いてある言葉。

このフレーズが好きすぎて、原作を読んでから“朝”という漢字がとんでもなく好きになった。
きっとそういう人は多いと思う。

実里がなぜあんなにも槙生ちゃんのことが嫌いだったのか、その理由は原作でもはっきりとは明かされない。自分の才能を信じることができた彼女への嫉妬なのかなんなのか。

理由が明かされないのは、死んだ人の気持ちは分からないから、だと思う。

一筋縄ではいかない心を描いた作品だからこそ、実里の心をステレオタイプに理解しようとするのは野暮な気がする。

小説家となった槙生のことを実里は否定するけれども、“朝”に“必ず来る新しくて美しいもの”を見いだせる感性はたしかに槙生ちゃんとの血のつながりを感じるし、朝が詩を書いているところにも血縁を感じる。

わからないことは、わからない。

槙生と実里の関係性は、それを体現している気がする。

そして槙生ちゃんの元彼笠町くん!瀬戸康史が演じている。

いやあ瀬戸康史全然原作とビジュアル違う!!!って思ってたしビジュアルだけなら今もそう思ってるんだけど、観てみたらめちゃめちゃ笠町くんだった。

ガッキーと瀬戸康史のふたり、よすぎた。

笠町くんいいやつすぎる。
これは観た人みんなが瀬戸康史好きになるね。

あとは主人公の友人やらせたらたぶん夏帆の右に出る人おらんなと思ったのと、弁護士染谷将太は全っ然違うって!ってかんじやけど染谷将太染谷将太でいいなって思える説得力があって染谷将太ってすごいなと思いました。
このふたり、ふたりとも『ブラッシュアップライフ』に出てたな~。

原作のラストが「ここで終わり?!」ってとこで終わってしまい、そのせいでどんなラストだったか今思い出せない(買ってあるから今すぐこの端末で読み返せるのだけど)のだけれど、映画のラストもそんな感じで、生活の中を切り取った一部って感じが『違国日記』らしくてよかったな、と思う。


f:id:cherryoulife:20240601010517j:image

特典でいただいたノート。
朝のノートを元にしたグッズ。

朝はぎょっとするくらい子ども、と書いたけれど、もらった名刺をマスキングテープでノートに貼る感性は絶対におとなにはないもので、めちゃめちゃ好き。

あと実里のノートはロルバーンだった。
ロルバーン好きなのでそこ大注目だった。

槙生ちゃんは白い部屋に住んでると勝手に思ってたけど思ったより茶色かった。
でも空気はちゃんと槙生ちゃんの家だった。

朝の鞄とベースケースにはどれも食べもののキーホルダーがついてた。餃子かわいかった。餃子もおいしそうだった。自炊あんまりしない?人の家なのに思いつきで餃子包めるのかはちょっとリアリティに欠ける気がしたけど。具材めっちゃ充実してたし笑

小道具や大道具もいろいろ書きたくなるくらい細やかでよかったな。

いただいたノートに何か書きたいな。
何を書こうかな。

6月7日公開。
おすすめです。