髪を切った。
1月に切ったはずなのにまた気づけばウエストのくびれの位置くらいまであったロングヘアを、肩下くらいまで切った。
「バッサリ行きましたね~」
と、美容院のお姉さんにも言われた。
切ってみると、伸び始めたボブカットくらいの長さになり、イメチェンと思われてもしかたない変わりようになってしまった。
髪を切った理由はただひとつ。
わたし自身が、ロングヘアをキープするだけの精神力を保てなくなってきたからだ。
髪も傷んできていて、色が抜けた髪はライオンのたてがみのように照明の反射で金髪に見える。
髪が目に入る度に、自分に不釣り合いな長さの髪に嫌気がさした。
わたしは過去2回、ヘアドネーションをしている。
ヘアドネーションとは、病気などの理由で医療用ウィッグを必要とする子どもたちのために、ウィッグに使用する髪を寄付する取り組みだ。
過去2回のヘアドネーションの中で、わたしはボブカットとロングヘアの間を行き来している。
最後のヘアドネーションは3年前。
ちょうど今の会社を辞める1ヵ月前に腰まであろうかという髪を顎の高さくらいのボブにした。
その後もヘアドネーションをするつもりで伸ばし続けてきた。
しかし、次のヘアドネーションができそうなくらいまで髪が伸びてきた昨冬、髪への想いが変わってきた。
もう少し、ロングヘアのままでいたい。
前職は規定の髪色のスケールが5だった。
暗に「染めるな」と言われているようなもので、前職の時は頭に墨汁をひっくり返したような黒髪だった。
ヘアドネーション後はボブカットといえば聞こえがいいものの完全なるおかっぱ。
おかっぱで今の会社に入社した。入社後、東京で研修をしている間に、研修担当の役席が大阪の営業部に
「こけしが来るよ」
と伝えていたため、配属前のわたしの前評判は「こけし」だったらしい。否定できない。
社員証の写真もこけしだ。
社員証を見る度にそのことを思い出す。
もっとも、社員証を見る機会はそんなにないのだけれども。
今の会社は髪色に関する規定はない。
ライオンのたてがみレベルの金髪はあまりよくはないが、前職よりはずっとずっと、ずーーーーっと自由だ。
わたしは、茶髪ロングヘアの自分がいちばん好きだ。
丸顔で背も低いので、診断してないけどおそらく顔タイプ的には短い方がいいと思う。
それでも、茶髪ロングヘアの自分がいちばん好きだ。
そう思って、冬に切ったときは、15センチほどに留めて、ロングヘアをキープした。
周りからはあまり気づかれないくらいだった。
でも、切ってから、どんどんロングヘアへの想いがしぼんでいった。
いろいろやってみたけど、結局さらーっとしたロングヘアにはなれない。
かといって毎日巻けるような几帳面さもない。
1週間の5/7は、ばたばたとひとつにまとめた髪をバナナクリップでばちんと留めるだけの髪が長い理由が分からなくなった。
いてもたってもいられなくなり、でも前切ってもらった美容院は予約が取れなかったので、昔行っていた美容院でさっくり切ってもらった。
というわけで、わたしは肩下くらいのボブカットになった。
「ばっさり切りましたね!」
と言われても特に長い髪に未練はない。
ボブの自分の顔も知っているし、髪も伸びるのが早いのできっと気づけばまたロングヘアに戻っている。
アラサーでボブカットもなぁ、と思ったけれど、3年ぶりにボブになってみると、確実に顔は年齢を重ねているような気がした。
これから、髪をどうしていきたいかはまだ決めていない。
ヘアドネーションをするためには腰くらいまで髪を伸ばす必要がある。
わたしはもう、そこまで長い髪を維持できる精神力がない気がする。
だからもう、ヘアドネーションはできないかもしれない。
2回やったんだからいいじゃんという気持ちもありつつ、申し訳ない気持ちが拭えない。
でも、ロングヘアをキープしたいと思った4ヵ月後には切りたいと思って切っているので、またいつかヘアドネーションしようと思う日が来るかもしれない。
その日まで、自分に正直に生きようと思う。
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美容院まで自転車で向かった。
普段通らない道を通ったら、木洩れ日があまりに美しく驚いた。
今年は5月の新緑のきらめきの美しさにたくさん気づけている気がする。
こんな人生も悪くない。