2023.12.2(Sat)
イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
at 国立新美術館
行ってきました!
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イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
まずはイヴ・サンローラン展!
今日のメインはこちらです。
イヴ・サンローラン展!行く!
と意気揚々と決め、せっかくファッションの展示に行くのだからすこしはおしゃれを……と思ったはいいものの、わたしイヴ・サンローランのアイテム何も持ってないわ!ということに当日気づくという……笑
シャネルやディオールならまだリップ持ってたんだけど笑(これも苦しい笑)
でも、普段はイヴ・サンローランには手が出ないような庶民でも、美術館なら気軽にイヴ・サンローランの芸術とその美を体感することができます。
イヴ・サンローラン
わたしはイヴ・サンローランというかブランドにあまり明るくないので、イヴ・サンローランが19歳からディオールで働き始め、ディオールの急逝を受けて21歳にしてディオールのデザイナーに抜擢されたと知ってとても驚きました。
(ディオール展に行けていないので、クリスチャン・ディオールがそんなにも早く亡くなっていたことすら知らなかったです)
その後、イヴ・サンローランはディオールから独立し、イヴ・サンローランとしてコレクションを発表し始めます。
今回の展示は、イヴ・サンローランの半生について、コレクションを鑑賞する際に人によっては先入観となってしまう可能性のある事柄を意図的に明示しない配慮がなされていると感じました。
例えば、サンローランがディオールを離れ、自身のブランドを立ち上げた理由は展示の最後の映像で語られるのみで、途中では説明がありません。
(アルジェリア独立戦争で徴兵され、精神を病んでしまいディオールを追われたそうです)
また、サンローランのパートナーであったピエール・ベルジェについても、展示序盤では「パートナー」という記載に留めるのみで、50年来の恋人だったという事実は途中まで明言されません。
そういった配慮に、ステレオタイプな先入観を持たずにコレクションを観てほしいというこだわりを感じました。
オートクチュール
ブランドに明るくないわたしは、ファッションプレスで見かけるハイブランドのコレクションは、理解が難しいなと常々思っていたのですが、イヴ・サンローランのコレクションを観て、オートクチュールのコレクションは、衣食住の「衣」ではなく、芸術としての「作品」なのだと実感しました。
これまで、アーティスティックや宝塚の衣装展に訪れる機会はそれなりにあったのですが、そういった衣装を間近で見る度、
「これらの衣装は、舞台で輝くために存在しているのだな」
と感じることが多かったんです。
衣装たちはもちろん細やかなこだわりが詰まっていて素敵なのですが、ライヴでも宝塚でも、その衣装がいちばん輝く瞬間って、舞台の上なんです。
正直、写真を通した方がきれいに見えるな、と思うこともあったりしました。
でも、イヴ・サンローランの作品は、展示の最後にグッズショップでコレクションを撮影したポストカードを見ていても、
「写真より実物を見た方がよかったな」
と思う作品がとても多くて。
イヴ・サンローランのコレクションは、目の前でほんものを見るからこそ輝く芸術なのだと実感したんです。
そして、最も輝くのは、マネキンではなくモデルさんが纏い、ランウェイを歩いている瞬間なのだろうな、とも感じました。
実際にマネキンを着て展示されている作品のファッションショーの時の写真が展示されていることも多かったのですが、モデルさんが着ているときの写真を見るとまた感じ方も全く異なって。
マネキンが着ているとあまり魅力がわからなかった作品をとても美しく感じたりする感動がありました。
イヴ・サンローラン展に訪れて改めて、オートクチュールと美術館の親和性の高さを実感しました。
着るための衣服ではなく芸術としての作品は、絵画と同様に保存されるのがあるべき姿なのだと感じました。
イヴ・サンローランが美術館を作り、コレクションを保存している、と知って深く納得しました。
数々の作品を間近で見ることができてとてもうれしかったです。
初のオートクチュール・コレクション
イヴ・サンローランの独立までの半生を写真で眺めたのち、本格的なコレクションの展示はPコートから始まります。
Pコートやドレスの既存のデザインの再構築で新たなスタイルを生み出していてとても美しかったです。
特にイヤリングもとても美しく印象的でした。
サンローランはドレスはシンプルなラインに留め、アクセサリーのデザインにこだわったそうで、目を引く美しいアクセサリーがたくさんありました。
PコートのイヤリングはPコートのボタンとおそろいでとてもかわいかった。
このコーナーではコレクションと共に仕様書やスケッチも展示されていて、このスケッチからこのドレスが!!!と制作の過程を垣間見られてとても楽しかったです。
イヴ・サンローランのスタイル
イヴ・サンローランのアイコニックな作品たちが展示されていました。
タキシード、ジャンプスーツ、サファリ・ジャケット、テイラード・スーツなど。
どれもとても美しかったです。
想像上の旅
イヴ・サンローランは旅をすることはあまり好まなかったそうですが、(それでも桜の季節に東京・京都・奈良には来ている!)各国の民族衣装からインスピレーションを得た作品を多数発表しています。
次に出てくる画家へのオマージュ作品もそうですが、各国の文化への影響を隠さずにコレクションに昇華させていく姿勢が意外でした。
アーティストって独自性というか、「見ればこの人の作品だと分かる」ところを目指したくなるイメージでした。
でも、イヴ・サンローランは、「イヴ・サンローランでしかなし得ない」デザインではあるのだけれど、オマージュ元の文化もしっかり伝わってくるんです。
だからこそ、様々な文化やアートの要素を持った幅広いコレクションが展開されているのだなと思います。
日本の浴衣文化をモチーフにしたコレクションもあり、イヴ・サンローランは帯の結びの部分を大きなリボンにしてぽこんと後ろの腰につけていてかわいかったです。
オマージュ元の文化も伝わると書きましたが、これは説明読んで初めて帯をモチーフにしていると気づきました。笑
あとは中国、ロシア、アフリカ、モロッコ、スペインなど、巡っているだけで旅をしている気分になりました。
スペインの闘牛士をモチーフにしたコレクションは、宝塚感がすごかったです。笑
服飾の歴史
イヴ・サンローランのコレクションは国だけでなく時代をも飛び越えます。
過去の服飾をモチーフにした作品もどれもかわいかったです。特にロココ時代が好きなので、ロココをモチーフにしたドレスはとてもかわいかったです。
舞台芸術
イヴ・サンローランは舞台や映画の衣装も手がけています。
ジジという方の舞台衣装も手がけていたそうで、大羽根のものもあり宝塚感がすごかったです。
まるでロケット衣装?!なコレクションもあり宝塚感がすごかったです。
アーティストへのオマージュ
イヴ・サンローランはアーティストへのオマージュ作品も多く発表しています。
この章だけ写真撮影可でした!
モンドリアン
メインビジュアルになっているのはモンドリアンの『コンポジション』へのオマージュ。
(でもこれ、モンドリアンを知っている人が見たらすぐにオマージュだと分かるけど、モンドリアン知らない人が見たらイヴ・サンローランの革新的なデザインだと思ってしまいかねないから、これをメインビジュアルにする必要はなかったんじゃないかなぁと思っている)
とても美しかったです。
以前エミリーテンプルキュートでもコンポジションをオマージュしたドレスを発表していて、あれもすごく欲しかったなぁと思い出しました。
オマージュされて改めて感じる『コンポジション』という作品のすごさ。
ゴッホ
ゴッホの『アイリス』へのオマージュ。
『ひまわり』もあるそう。
ビーズ?の総刺繍なのがすごいです。
これぞオートクチュール。
後ろにはずらりとオマージュ作品が。
ポップアートやジョルジュ・ブラック、ピカソなど。
モネはないのかと探したけれどもなかった。
ジョルジュ・ブラックのオマージュ作品がいくつかあって、友人が
「心を病んでしまったからブラックが好きなのか、、、」
とつぶやいていました。
ジョルジュ・ブラック、何回見ても難解なので(洒落ではなく)そんなに知識ないのだけれど、そうなのか。。
そんなことを書きながらブラックについて調べていたら、そうかピカソもブラックもキュビズムか~……と気づき、キュビズム展行こうかな?!と思い立ちました。
(キュビズムは何度見ても難解だな~と思ってしまうので行く予定ではなかった)
また行ってみようかな。
Love
サンローランは“Love”をテーマとしたグリーティングカードを毎年送っていたそうで、そのいくつかが展示されていました。
なんとそこには“1992”も!
この年はアンディ・ウォーホルの『花』をオマージュして制作されたそう。
偶然にも生まれ年があったのがうれしくて、
アクリルキーホルダー買ってしまいました。
普段はあまり手に取らない、ポップなデザイン。
どこにつけようかな🌼
イヴ・サンローラン展、おすすめです!
大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
続いてはこちら。
SNSを見ていてたまたま知ったのですが、無料と聞いてこちらも楽しみにしていました。
大規模なインスタレーション作品が展示されています。
とはいえ展示じっっっくり見る系の人たちが集まってイヴ・サンローラン展に来ているため、時既に17時半。(すでに滞在時間3時間超え。笑)
ガラス越しに真っ暗な空を見ていたので、導入の
本展覧会は、国立新美術館で最大の、天井高8m、2000m²にも及ぶ展示室をダイナミックに使って開催されます。
という文面に
「え!」
とひるんでしまいましたが、いざ入ってみると
作品ひとつひとつの規模感に圧倒されました。
そして、「でっかいのがぽんぽんって展示されているのね!それならいける!」
と勝手すぎるひと安心……笑
美術館はアーティストの生み出すパワーを浴びるので、鑑賞者も体力を消耗するんです……。
まずはじめの作品。
第一印象
わーお!
でっかい壷~!
(小学生なみの語彙……)
しかし壷は壷でいいそうです。
『Gravity and Grace』という作品。
原子力へのアンチテーゼを込めているそうです。
中に多面体に取り付けられた照明が設置されていて、それが上下に動くことで光や影がゆらぎます。
床には文字も。
写真撮影は可なのですが動画撮影は禁止。
ゆらぎは動いてこそなのでぜひ現場で体感していただけたらと思います。
アンチテーゼはインパクトがありますが、この壷近づいてみるととても美しいんです。
ステンレスでできた動物や花でできていて、透明な部分は透けています。
遠目から見たらガラスの大きな壷に白でペイントされてるかと思ったのですが、実際は無数の枠で壷がかたちどられています。
桜を見つけたので撮りました。
もう一つ印象的だったのが、こちら。
全くうまく撮れてないのですが、これ、風によっておおきなビニール(シースルーの布かと思ったらビニールらしい)が波のように、いきもののように動き続けているんです。
『Liminal Air Space—Time 真空のゆらぎ』という作品。
あちら側から風が吹いているはずなのになぜかこちらには風が来ないこと、どんな風向きで風が来ているのかは分からないけどビニールが波のように諸行無常の動きを繰り返していること、不思議な点が多く見入ってしまう作品でした。
この作品、歩くことができる境目あたりを歩きながらずっと波を見つめていると。
襲い来る津波のように見えるんです。
しばらく眺めているとこの波がこちら側にはこないことを知っているので、メタ的にこちらには来ないことを知っている、津波。
実際に津波の被害に遭われた方は、こんな風に襲ってくる波をご覧になったのではないか、と考えてしまいます。
足がすくみます。
津波の疑似体験の意味もあるのではないかと思ったら、説明には特に何も書かれていなかったので、アーティストの意図するところではないのかもしれませんが……。
諸行無常の美しさと共に畏怖も感じる作品でした。
ほかにも様々な作品があり、楽しかったです。
イヴ・サンローランに行かれる際はこちらもぜひ!